企業における文書管理とは、業務遂行のために作成・共有されるさまざまな文書を管理することです。
本記事では、文書管理の重要性や目的について解説するとともに、より効果的な文書管理を実現する方法についてご解説します。
文書管理とは
文書管理とは、業務遂行のために社員一人ひとりが管理する文書と、企業全体で組織的・体系的に管理をするべき共有文書の両方に対して、おこなう管理活動のことです。単に文書を保管しておくことではなく、文書の作成から活用、処理、保管、廃棄までの流れ(ライフサイクル)に沿った適切な管理のことを示します。
具体的な種類としては、契約書、労務系の書類、稟議書、製品の設計図など多岐にわたり、管理する文書は紙や電子などの媒体を問いません。
文書管理の重要性
業務効率化・生産性向上につながる
文書管理をおこなうことで、必要な文書を素早く見つけ、利用できるようになるため、業務効率化や生産性向上につながります。書類を探す時間は1人あたり年間で約100時間とも言われており、文書管理が適切におこわれていれば業務時間の大幅削減が実現できるでしょう。
また、必要な文書がだれでもすぐに閲覧できることで、業務遂行に必要なナレッジの共有が可能になります。従業員全員がナレッジを活用することで、質の高い業務を実現すると同時に、属人化を防ぐことにもなります。たとえば、新入社員が稟議書をはじめて作成する場合などに効果を発揮します。過去の稟議書がすぐに閲覧できることで、記載するべき項目・観点を漏らさず、間違いの少ない文書を作成できます。企業規模が大きくなるにつれて文書数と社員数が増えるため、文書管理が適切に実現できると、業務効率化の効果は増大します。
企業コンプライアンス強化になる
文書管理は企業のコンプライアンス強化にも繋がります。適切な文書管理は情報漏洩や改ざん、紛失を防ぐために非常に大きな役割となります。たとえば契約上で守秘義務のある文書が外部に流出した場合、会社の信用を失うだけでなく、損害賠償を請求される可能性もあります。また、社外への情報流出だけでなく、社員同士の個人情報についても注意が必要です。
文書管理は企業の説明責任に対しても有効です。顧客とのトラブルや不祥事などが発生した場合、やり取りをおこなった文書や社内意思決定に関する文書が保管されていれば、相手先やステークホルダーに対しての説明の根拠になります。反対に必要な文書が管理されていなければ、企業の信用は大きく損なわれます。
コスト削減になる
文書管理は業務効率化や生産性向上に加え、保管する手間やスペースのコスト削減にも寄与します。紙の書類であれば数年分を棚やラックに収納するためのスペース・家賃が必要になります。ルールに沿った廃棄をおこなうことで、空いた収納スペースや管理コストをほかの用途に利用できます。また、限りあるオフィス空間の有効活用にもつながります。
外部倉庫を契約している場合は、より多くの管理コストのほかに輸送費や文書を探す人件費もかかります。外部倉庫の利用はコスト以外にも、探して送付する時間があるため文書の閲覧まで時間がかかることや、とりあえず倉庫に保存という習慣になりやすいため利用には十分な検討が必要です。
【補足】文書管理で注意すべきこと
文書管理をする際に注意するべきポイントとして、文書の保存期間があります。文書ごとに法律上や契約上で決められている保存期間をしっかり把握することが必要です。
文書別の目安として、総務に関わるものは2〜5年、経理に関わるものは7年、会社法に関わるものは10年です。企業は対象の文書を保存期間内は、提出を求められた際は迅速に対応できるように、適切に管理しなければいけません。もちろん、ただ管理すれば良いのではなく、法定保存期間を過ぎた文書などは企業のルールに則って速やかに処理し、文書のライフサイクルを管理する必要があります。機密情報を含む不要な文書の廃棄を怠ると、情報流出のリスクが発生し、従業員や顧客とトラブルに発展する恐れがあります。また、文書の保存期間を決めておかないと、文書を探す時間が増え、管理するためのコストも増えることになります。
文書の「保管」と「保存」の切り分けも大切です。保管とは必要書類をすぐに取り出せる状態にすることで、保存とは使わなくなった文書をすぐには取り出せない状態にすることです。どの文書を保管し、保存し、廃棄するのかは定期的にチェックしていく必要があります。
文書管理の方法
社内で文書管理ルールを策定・マニュアルなどで浸透させる
文書管理はルールの策定と社員への共有が大切です。文書管理ルールの策定は媒体(紙・デジタル)を問わず必須となるので、非常に重要です。文書管理ルールを策定し、浸透させるまでに必要なことを解説します。
文書管理ルールの策定には、最低限以下の4項目が必要です。
- 適用範囲…ルールが適用される対象範囲(紙文書だけか電子記録も含むのかなど)
- 保管/保存…文書ごとの保管期間や保管場所、ファイルの命名ルール、複製物の取り扱いなど
- 廃棄…廃棄の手順、方法
- 罰則/改廃…ルールを破ったときの対処や、ルールの改廃方法
また、文書管理ルールの主管は総務部が一般的ですが、電子文書の場合は情報システム部と共同でおこなうことも重要です。
文書管理ルールの策定は、社員へルールを浸透させるところまで含めて考える必要があります。すぐ閲覧できる場所にマニュアルを配置したり、情報漏洩のリスクを絡めた社内研修が有効です。文書管理ルールを全社で統一することで、部門間の情報連携も簡単になるでしょう。
文書を物理的に分類する
文書は種類別、部門別に分類すると管理と検索の両方の側面でメリットを得られます。具体的な分類方法として、「ワリツケ式」「ツミアゲ式」の2つがあります。
ワリツケ式は、社内の文書を管轄する部門(総務部など)が「大分類>中分類>小分類」のように、トップダウンで文書を整理する方法です。特定の部門でおこなうためスピーディーに分類できる反面、ルールに当てはまらない文書も多く形骸化しがちです。
ツミアゲ式は、実務担当者がすべての文書を確認した上で「小分類>中分類>大分類」のように、小さなまとまりを積み上げて整理する方法です。ワリツケ式に比べ、実態に沿って文書を分類できる反面、すべての書類に目を通す必要があるため、多くの時間を要するというデメリットがあります。現在、多くの公共機関や企業がツミアゲ式を活用しています。
文書をファイリングする
ファイリングとは、文書をファイルやバインダーに挟んでキャビネットに収納する作業のことです。ファイリングによって、文書のここでは、「バーティカル式」「バインダー式」「ボックス式」の3つを紹介します。
バーティカル式は、種類ごとにクリアファイルへ収め、縦置きで保管する形式です。書類を綴じないため出し入れしやすいですが、紛失の可能性が高く、長期管理には向きません。
バインダー式は、厚型ファイルに文書を綴じ、本棚のように保管する形式です。書類の順番が狂いにくく、紛失の可能性も低いためマニュアルの保管などに適しています。
ボックス式は、クリアファイルをボックスに入れて管理する形式です。ボックス自体に分類を表記できるため、バーティカル式より分類が細かくできます。ボックス状で持ち運びしやすく、倉庫での保存に適しています。個人情報やプロジェクト関連資料など、特定の人物しか利用できない文書の管理にオススメです。
文書管理システムの利用
文書管理システムとは、業務に必要な文書をデジタル化し、効率よく文書管理をおこなえるサービスです。紙文書ではおこなえなかった、文書の自動的な破棄や権限の制御も可能になります。システムによっては文書の作成から申請、破棄までのすべてがデジタル上で完結し、紙が一切不要になります。
文書管理システム導入のメリット
文書管理システムは、分類やファイリング、文書管理のルールをより明確化して効率的に実施する方法として挙げられます。紙文書ではおこなえなかったアクセス権の制御も可能になります。検索時間の短縮や、手軽な文書の更新、文書の再利用なども実現できます。
また、企業には文書(エビデンス)を元にした承認/進捗確認/報告が多く存在します。そのような業務遂行に関する文書は連鎖する業務が多いため、業務プロセスを含めた管理が必要になります。ワークフロー機能を兼ね備えた文書管理システムの活用で、業務プロセスも含めた文書管理ができます。
文書管理システムをスムーズに導入するためのポイント
文書管理システムを導入するためには、決裁権を持った上司や経営者に対して導入の背景や効果を理解してもらう必要があります。あわせて、他部門との関わり方や決めておくべきルールなど、スムーズに導入するためのポイントをご紹介します。
上司や経営者に導入する背景・効果の理解を深める
決裁権を持つ上司や経営者に対して文書管理システム導入の背景や効果の理解を深めておく必要があります。文書管理は長年続いている業務のため、現在の運用でも回せていると思われていることが多く、それを理由に反対されることがあります。そのような場合は、現状で困っている業務の整理やシステム導入の費用対効果を調査し、システムがどれだけ有効であるか理解してもらうように促しましょう。参考事例はシステムを提供している会社のWebサイトからダウンロードできるので、まずは資料請求から始めると良いでしょう。
他部門を巻き込んで導入する
文書管理システムは、部門ごとの業務から全社に影響がある業務までさまざまです。一部門だけでは完結しない業務もあるため、個別最適ではなく全体最適を目指した導入がオススメです。部門ごとにシステムを導入してしまわないようにあらかじめ協力を依頼しておくと、導入後の成功にも繋がります。
あらかじめ計画を立てる
文書管理システムの導入には計画性も大切です。あらかじめ文書の分類や業務の洗い出しをしておくことで、文書管理システムに必要な要件や機能が見つかり、システムの選定にも役立ちます。
文書管理は総務部や情報システム部が旗振りになることが多いため、全社での運用ルールや各部門との関わり方を決めておくと良いでしょう。
まとめ
文書管理は日々の業務を効率化し、コスト削減やコンプライアンス強化にも寄与する方法です。文書管理はルールの策定から運用、改善を含めた設計が必要になります。現状を把握し、どのような文書管理が必要なのか把握することから始めましょう。
また、継続的な文書管理には文書管理システムの活用が有効です。弊社が提供する「SmartDB」は、ISOや内部統制に関する文書管理に必要な文書改定機能があり、高度なワークフローにも柔軟に対応できる機能も備わっています。専門のスキルがない非IT部門の担当者でもノーコードで業務アプリを作成できるので、全社的に精度の高い文書管理と業務プロセスのデジタル化を実現できます。
今回の記事を参考に、文書管理のあり方を見つめ直してはいかがでしょうか。
内部統制に関わる文書管理システムで業務を効率化
非定型業務の効率化が内部統制のカギをご紹介。
「SmartDB」にユーザーの細かなニーズを取り込む柔軟性があるからこそ実現できた、バンダイナムコの成功事例をご紹介。
詳しくはこちら
この記事の執筆者:ホシ(プロモーショングループ)
新卒でドリーム・アーツに入社
お客さまのサービス利用立ち上げ支援をおこなう部門から現在の部門へ異動
専門知識がない方にも分かりやすい記事の作成を目指す